NTNU図書館訪問
学会に参加するために台北に来ています。会場となった国立台湾師範大学(National Taiwan Normal University, NTNU)のキャンパスを案内してもらいました。写真は図書館の建物です。
この図書館、8階建てで開架図書がずらりと並んでいます。ちょうど向かいのビルから全体が眺められたのですが、圧倒的な大きさで、カメラの画角に収まりきりませんでした。内部が吹き抜けになっているので、実際の床面積はそう広いわけではないかもしれません。しかし、外から開架がずらりと並んでいる様子をみると、なんだかワクワクして来ませんか?
2枚めの写真は内部の様子です。大きな吹き抜けの空間があることがわかります。
吹き抜けの下の広場には、マルチメディア端末らしきものが数台、置いてありました。また、入口右側には大学のお土産屋があり、その奥は大学紹介のコーナーになっています。今時ふうの、デジタルサイネージを活用した近代的な大学紹介がずらりと並んでいました。大画面がタッチパネルとなっており(プロジェクターらしき投影もタッチ操作ができるようになっていたのですが、どういう仕組みになっていたんだろう?)、順番に案内してもらいました。
説明は「中文/English」と二ヶ国語を選べるようになっていましたが、日本人なら漢字がわかるから中文の方がいいという意見と、しかしやはり中国語はよくわからないからEnglishでお願いしますという意見と、わかれてしまい、あるときは中国語で、またあるときは英語でと、その場で使い分けて説明してくれました。
ところで、キャンパスツアーで案内してくれたのは、NTNUの学生さんたちです。きれいな英語でわかりやすく説明してくれました。聞けば、学部の2年生とのこと。案内係の制服も用意されており、また、よく訓練されているなぁという印象でしたが、特別に選ばれた学生たちなのでしょうか。それにしても、優秀さを感じさせる案内でした。見倣いたいものです。
京コンピュータを見学しました
2017年の飯尾ゼミ夏合宿は、2泊3日で神戸に行きました。
飯尾ゼミでは、毎年、夏合宿で施設見学を行っています。昨年は武雄図書館に行きましたが、今年は神戸の理化学研究所計算科学研究機構を訪問し、「京」コンピュータを見学しました。
1つの建物がまるごとスーパーコンピュータになっている(ストレージ施設や冷却施設込)ことに圧倒され、また、常に高い稼働率で様々な計算が行われていることも驚きました。
理研の広報担当の方から、京だけでなくポスト京のことまで詳しい解説をいただき、とても丁寧な説明を受けました。飯尾ゼミでは、4年前に富士通のリレーコンピュータを見学しています。図書館だけでなく、ふだんなかなか見ることのできない情報処理施設の見学も企画しています。さて、来年はどこに行きましょうかねえ。
6th WSSMで発表
飯尾ゼミの4年生、甲斐光彦くんが、8月24日から26日までカナダのトロントで開催されている学会で研究成果を発表しました。
今回は、NBiS(International Conference on Network Based Information Systems)という学会において併設されているワークショップ、WSSM(Workshop on Web Services and Social Media)での発表です。WSSMというワークショップは、その名のとおり、ウェブサービスやソーシャルメディアに関する研究についての議論を行うワークショップです。飯尾ゼミからも、毎年、誰かがなにがしかの発表を行っています。今回、本学からは、4年生の甲斐くんと、ポスドクの李さん、および、私の3名が、以下のテーマで研究成果を発表しました。
- M. Kai, T. Tsukamoto, and J. Iio, “Comparison of Typing Efficiency between PC and Smartphone in the Case of Younger Generations,” The 6th Workshop on Web Services and Social Media (WSSM2017), L. Barolli et al. (eds.), Advances in Network-based Information Systems, Lecture Notes on Data Engineering and Communications Technologies 7, pp. 1105-1116, Toronto, Canada, (2017.8).
- T. Lee and J. Iio, “ELVIDS: Video Search System Prototype with a Three-level Hierarchy Model,” The 6th Workshop on Web Services and Social Media (WSSM2017), L. Barolli et al. (eds.), Advances in Network-based Information Systems, Lecture Notes on Data Engineering and Communications Technologies 7, pp. 1096-1104, Toronto, Canada, (2017.8).
- J. Iio and T. Lee, “Text-based Video Scene Segmentation: A Novel Method to Determine Shot Boundaries,” The 6th Workshop on Web Services and Social Media (WSSM2017), L. Barolli et al. (eds.), Advances in Network-based Information Systems, Lecture Notes on Data Engineering and Communications Technologies 7, pp. 1086-1095, Toronto, Canada, (2017.8).
4年生が国際会議で発表するのは今回が初めてのケースです(共著、あるいは、予稿の提出まではできたものの、事情で参加できず代わりに飯尾が発表したケースは有り)。初めての国際会議発表にもかかわらず、堂々と発表できていました。
ベトナム研修2017
今年も、8月6日〜11日という日程で、「グローバル・スタディーズ」ベトナムプログラムが実施されました。文学部が開講しているグローバル・スタディーズは、文学部学生だけでなく全学に開放している科目で、夏休みや春休みを利用して海外で短期の研修を行います。企画する教員の裁量により様々なプログラムが用意されており、渡航先や海外での研修内容も、多様なプログラムを選ぶことができます。私(飯尾)の担当するベトナムプログラムでは、NECベトナム様の協力を得て、ベトナムはホーチミンにて、先進的IT活用に関する議論をベトナムの学生と共同で実施する国際ワークショップを実施しています。
2014年度から始まったこのベトナムプログラムも、今年度で4回目の実施です。今年は日本から10名、ベトナムから11名が参加し、賑やかな開催となりました。
「読書感想文および図書館利用実態に関する研究」はじめました
プレサーベイをしてみたり、学生を交えて研究チームの体制づくりをしてみたりと水面下で半年間ほど調整しておりましたが、本日、無事にプレスリリースされました。
八王子市図書館との共同研究として、「読書感想文および図書館利用実態に関する研究」を始めます。八王子市図書館が数年前より手がけてきた読書感想文コンクールへの応募作品(個人情報を削除したもの)を分析したり、図書館の利用実態データを分析したりすることで、「読書のまち八王子」をさらに推進すべく、八王子市を支援します。
なお、本活動は、八王子市と中央大学との包括連携協定の一環としても位置付けられています。
第36回CW研究会で発表
2017年6月29日に開催された第36回サイバーワールド研究会で、飯尾ゼミの4年生、浅田省吾君が「畳込みニューラルネットワークを利用した同一作品上のアニメ・漫画(原作)分類器作成」というタイトルで研究成果を発表しました。この研究は、機械学習の1つである畳込みニューラルネットワーク(CNN)を利用して、原作の漫画として描かれたキャラクターなのか、アニメ化されたもののキャラクターなのかを判別しようというものです。
完全な判別器を作るのはなかなか難しかったのですが、やってみたらそれなりに判定することができたと報告。質疑応答では、表情に関してはどのくらいばらつきがあるものを学習させているのか?この研究のゴールは何か?今回は同一作品のみを対象としているが、汎用的に他の作品でもアニメと漫画を区別できるようになるのか?などといった質問が出され、活発な議論が行われました。
なお、一般講演に続き招待講演のテーマは「サイバーマネー」。プリペイドカードやクレジットカードといった旧来の電子決済だけでなく、仮想通貨(ビットコインなど)やFintechといった最近の事情まで、サイバーマネーに関する様々なお話をNECの望月さんから、そして、中国におけるサイバーマネーの普及に関する話題を東大の丸川先生から聴くことができました。どちらもたいへん興味深いお話で、有意義な研究会だったといえるでしょう。
飯尾ゼミ特別講演会2017夏
今年の特別講演会、2017年前期は株式会社創夢の取締役副社長、松山さんにご講演をお願いしました。お題はIPv6について。インターネットプロトコル、バージョン6に関する取り組みをご紹介いただきました。
奇しくも今日の4限、ゼミ前の時間に私が担当している「ネットワーク技術(1)」は、インターネット通信の仕組みを解説する回でした。IPのルーティングやアドレッシングの詳しい説明を、来週、実施する予定です。ところが、例年の同講義ではIPv4をベースに説明を行っていて、「IPv6については割愛します(勉強したい人は自分で勉強してね!)」と、解説をすっ飛ばしてしまっている内容なので、私にとってもたいへん勉強になるお話でした。ていうか、技術的にはハードコア、かつ、かなり踏み込んだ解説だったので、「ネットワーク技術」を受講していないメンバにはちょっとしんどかったかな?
まあ、技術的なお話だけでなく、KAMEとUSAGIのお話など開発プロジェクトに関する話題や、NGNの問題点などという社会制度の問題点などという話題もご提供くださったので、そのへんに興味があるメンバーには、その観点からも面白かったのではないでしょうか。私には「フォールバック問題でIPv6無効化というバッドノウハウが広まり、コンテンツ提供者が声を挙げた」という話がとても印象深く刺さりました。
今回、時間を大幅に超過しての講演会になりましたが、途中、質疑応答も盛り上がり、ゼミのメンバーに得るものも多かったのではないでしょうか。飯尾ゼミでは、様々な分野で活躍中のユニークな方々に、年間2回のご講演をお願いしています。毎回、講演会のあとは懇親会も開催します。今回も、夜の懇親会でさらに突っ込んだ議論が重ねられ、参加した学生には大きな糧となったのではないでしょうか。
2017年度春季HCD研究発表会で発表
2017年5月27日に、田町の芝浦工大で「2017年度春季HCD研究発表会」が開催されました。13件の口頭発表と7件のポスター発表が行われ、口頭発表では以下の3件に我々が関与しています。今回はだいぶ貢献できたのではないかと、自画自賛です ^^;
- 飯尾淳(中央大学)「講演スライドの撮影という迷惑行為に関する意識調査」
- 和井田理科(株式会社JVCケンウッド・デザイン)、相澤奈保子(株式会社リコー)、飯尾淳(中央大学)、他「HCD普及・啓発活動実践者のためのHCD入門講座雛形 ~β版作成活動の報告~」
- 塚本拓也、甲斐光彦、飯尾淳(中央大学)「若い世代におけるPCとスマートフォンのタイピング効率の比較」
とくに最後の塚本くんによる発表は、昨年の飯尾ゼミにおいて、塚本・甲斐らのグループで彼らが3年生のときに研究したテーマを膨らませて発表したものです。「初めての学会発表で緊張しました」とは本人の弁ですが、100人を超える参加者の前で堂々と発表できて、立派なものでしたよ。
大学生は「理科系の作文技術」を一読すべし
まず結論をいう.木下是雄「理科系の作文技術」は1981年初版という古い本ではあるが,その内容はいまだ衰えてはいない.また,「理科系の〜」と題されているとはいえ,日本の大学に通う学生諸君は「文科系・理科系にかかわらず」一度は目を通す価値があるだろう.いや,一読といわず何度でも精読することを強くオススメする.
ただし,やはり35年以上の歳月を経て,その記述が現在の事情とミスマッチを起こしている部分もある.私がいま手にしている書籍は1996年に増刷された38刷(!)のものであるが,その時点での状況を考慮しても,残念ながら,適切なアップデートがなされていない(注1).というわけで,本稿では,私が気になった「読み替えるべき」あるいは「現代の事情を他書で補足すべき」箇所を指摘しておきたい.
なお,個別の記述を指摘する前に,大きく何が違っているかを示しておこう.それは,ワードプロセッサあるいはプレゼンテーションソフトの活用にまったく触れていない点である.というよりも,原稿用紙に手書きで執筆する,OHPやスライド(注2)を用いてプレゼンテーションを行う,という状況が前提とされており,さすがにいささか時代遅れの誹りは免れまい.
では,私が少し気になった箇所を以下に指摘する.
- 「2.3.3 長さの制限」… 原稿用紙何枚という数え方,さらには,英文のワードカウント法に言及している.しかし,さすがに今は原稿用紙に書きつけるやり方は少数派ではないか?ワードカウントにしても,概算の方法が紹介されているが,いまではワープロが自動で勘定してくれるので,概算する意味がない.
- 「3.5.1 構成表を作るやり方」 … ここで紹介されている文書構成法は,今なら「マインドマップ使え」の一言で置き換えられるであろう.
- 「9.5.1 原稿用紙の使い方」 … ワープロの使い方に置き換えられるべき説明.「9.5 原稿の書き方」の節をまるごとアップデートする必要があるかもしれない.ただし「表9.10 校正記号」などは,いまでも多用する重要な情報を提供してくれているので,総じて古臭くなっているというわけではないが.
- 「11.3 スライドの原稿」 … これも,プレゼンテーションソフトに取って代わられた話.もっとも,そのままプレゼンスライドの作り方に読み替えることはできなくもない.
ざっと見直しただけなので,他にもあるかもしれない.しかし,このようなことに気をつけて読めば,それ以上の情報を与えてくれる良書である.以下,結論に代えて本書の評価について再度コメントしておこう.「理科系の作文技術」で解説されている多くの文章作法および関連する話題は,未だに示唆に富む内容を含んでいる.学生諸君だけでなく若手社会人の皆様,あるいは,文書作成に自信のない中高年の皆様にも,お勧めしたい書籍である.
- 注1: まあ,木下氏はその時点で79歳というご高齢であり,改訂を求めるのは酷というものであろう.
- 注2: ここでいう「スライド」とは,今日の「プレゼンテーションソフトで作成するスライド」ではなく,ポジフィルムによるスライド映写のことである.ポジフィルムによるスライドとは何かわからない人は,ググってみてください(手抜き).