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NHKクローズアップ現代+『フェイクバスターズ』

あけましておめでとうございます。2020年はコロナ禍で大変な1年でした。早くこの災禍が収束して、2021年は良い年になることを願っています。

先日、12月18日(金)放送の、NHKクローズアップ現代+『フェイクバスターズ』に出演の機会をいただき、社会心理学の観点から「フェイクニュース」についてのコメントをさせていただきました。人前に出るのはあまり得意ではないので、慣れないところで緊張して固まってしまいました(笑)。MCや他の皆様、そして編集くださった方々のおかげで、うまくまとめていただきましたことを感謝しております。どうもありがとうございました。

収録でうまく伝えられなかったことを、ここに記しておきます。

あの回のテーマは、虚偽情報がどのように拡散するのか、ということではなく、「なぜ信じてしまう(ときがある)のか」ということでした。そこで私が一番伝えたかったのは、「私たちはみんな騙されやすい」ということです。

私たちは、「見たいものだけ見てしまう」という認知的バイアス(確証バイアス)を持っています。また、「自分を価値ある存在だと思いたい(自尊感情維持の動機)」「知識がない時、関心がない時、あるいは十分な時間や注意を割けない時は、メッセージの内容そのものではなく、相手の見た目や肩書、話し方などの周辺的な情報で判断してしまう(精緻化見込みモデル)」という傾向があることもわかっています。また、虚偽の内容でも、ネット上にたくさん存在していることで、それが一種の「社会的証明」となって、真実であるかのように見えてしまう可能性もあります。しかもいったん態度を決定あるいは表明してしまうと、私たちは自分の中での一貫性にもとらわれてしまいがちです(認知的一貫性とコミットメント)。

こうしたバイアスは、人間がもともと持っているもので、インターネットが原因というわけではありません。ですから、マスメディアは良いが、インターネットが悪いのだ、というわけではないのです。そもそもメディアが介在しなくても起きることとも言えます。自分がもともと持っていた信念に沿った話である、自分の自尊感情をくすぐる、友好的で居場所を提供してくれる、専門家を名乗ってなんだか自信満々に話している、多くの人がそう言っている、そのようなとき、私たちは簡単に騙されてしまいます。(こうしたバイアスに私たちがいかに弱いか、については、チャルディーニ著・社会行動研究会訳『影響力の武器 第三版』誠信書房,2019をぜひご一読ください。)

ただし、インターネットやソーシャルメディアによる情報環境は、この傾向を強めやすいと考えられます。これまで様々な研究者が指摘してきたように、インターネット、とくにソーシャルメディアは、「自分と似た人とのつながりと、そうした人の意見への接触(エコーチェンバー)」「自分の属性や閲覧履歴などの情報を用いた、アルゴリズムによる自動的な情報提示(フィルターバブル)」などによって自分の信念を強化し、「自分とは異なる多様な人々」を、より異質で「誤った」ものとして見せてしまう可能性があるからです。

さらに注意しなくてはならないのは、私たちが日頃感じている不満や不信を利用しようとする人たちもいるということでしょう。デマや誤報は昔からあるとはいえ、現代の虚偽情報は、意図的に流す人々が存在する(また、そうした行為を行いやすい)というところが怖いように思っています。政治家や既存の権威に私たちが疑問を持つのは、民主主義社会において必要なことでもあります。問題は、それを利用しようとする人たちもいるということです。

私たちはみんな騙されやすい。人間は、様々な動機的・認知的バイアスから自由ではない。私たちが虚偽情報に惑わされないためには、そうした事実を認識したうえで、常に知識をアップデートしていくしかないと考えています。